今回は地元宮城県を走る第三セクター阿武隈急行線の紹介です。
もともとは国鉄丸森線を引き継ぎ福島まで全通させた鉄道です。開業までかなりの経緯で開通した鉄道です。東北本線の岩沼の次の駅の槻木から宮城県南部の丸森までを結んでいた本数も少ない盲腸ローカル線でした。普通なら廃止になる路線でしたが、丸森から先の線路を建設しており、実際には福島側の東北本線との合流部まであとわずかなところまで阿武隈川を跨ぐ鉄橋やトンネルがほぼ完成していた未成線でした。丸森線が廃止と決まると福島駅までつなぎ第三セクターとして阿武隈急行線を引き継ぎました。

開業当初2年はなんと当時の国鉄から気動車(ディーゼル車)を借りて阿武隈急行塗装に塗り替えて走りました。
そしていよいよ全線開通となり全線交流電化路線として開業しました。現在では新幹線の開業により並行在来線にさせられた私鉄線でも交流電化路線はありますが、新規交流電化路線を敷設したのは阿武隈急行のみです。車両も当時ではデザイン・性能面でもとてもすぐれた交流電車8100型を新車で導入しました、国鉄型のデザインを踏襲しつつ近代化されたデザインで、現在でも見劣りしません。

開通時は仙台・福島の両都市圏輸送も担う路線としてJR線にも直通しておりました。以前は福島口では郡山まで乗り入れており、JR車両が阿武隈急行線に逆乗り入れもしていました。車両デザインもシャープなカラーデザインで、自然の中を電車の速度で走る姿は、開業当時のキャッチコピーのまさに阿武隈「新感線」でした。ちなみにJR乗り入れ区間を除いては踏切がほぼない設計の路線です。
槻木から阿武隈急行線に乗る際はJR線の改札を通るか、ホームから跨線橋を渡りそのまま阿武隈急行線乗り場へ。大抵は東北本線からの接続待ちで、ホームに阿武隈急行の車両が止まっています。改札口もなく、そのまま列車内へ。初めて乗車する方は少し戸惑うかもしれません。
最近はAB900型の新型が続々と導入されております、編成毎にカラーリングが違うようになっており、お気に入りの色が来るとラッキー感があります。


槻木を発車し車内チャイムがなると「特急ひたち」のチャイムが鳴り、知っている人はちょっとびっくりします。
白石川の鉄橋を轟音で渡り、東北本線の別れ目は立体的で一見の価値ありです。運がよければ貨物列車と遭遇します。なんとなく新しいホームの駅と少し鄙びた感じの駅があります。鄙びた駅は旧丸森線時代からの駅です。線路は東北本線のバイパス機能を持たせた線路なので、古い枕木ではなく高規格枕木を使った線路です。大きな角田駅、かつての終着駅の丸森駅と、田園、山間部、蔵王山も見ながら到着します。
ここからが個人的には見どころ区間です、阿武隈川を鉄橋で渡ると阿武隈川沿いにかなりの速度でグングン進みます、所々、トンネルも何箇所もあり、川、トンネル、川、トンネルが続きます。阿武隈川の急流や名所の岩などが見られる区間で、阿武隈急行線でも次駅までの最長区間です。進行方向右側(福島方面)がおすすめです。あぶくま駅、兜駅付近まで阿武隈川の景色がよく見えます。
もう福島県です。 「やながわ希望の森の公園前」駅はかつて日本一長い駅名の駅でしたが、今は南阿蘇鉄道さんに抜かされています。けれども公園内には本物の小型SLが走っています(ちなみにMAIDE IN 福島です)。
まもなく梁川です、ここが本社および車庫がある阿武隈急行の本拠地です。車庫がホームより遠く、あまり観察ができないのが残念です(個人的には…)。

梁川からは路線の性格も変わり、乗客も福島に近づくほど増えてきます。朝には乗車したことはないですが、通勤通学路線として機能しているそうです。途中に大学があったりします。福島らしく果樹の木が多く見受けられます。季節によって果樹や果樹の花がよく見れます。市街地に入って東北新幹線が近づいてくると東北本線と合流です。合流部分は先頭車から見たい瞬間です(マニアは)。ここからはJRの線路を使ってラストスパートし、左側から福島交通飯坂線が寄り添ってくると終点福島駅です。ホームは福島交通飯坂線と共用です。

おすすめのフリーきっぷ「飯坂温泉日帰りきっぷ」を利用すると、阿武隈急行・福島交通飯坂線フリー乗車+飯坂温泉入浴券付きの格安きっぷもあり、福島交通飯坂線も楽しめてしまいます。
福島駅はJR・阿武隈急行・福島交通飯坂線3社が乗り入れおり、列車ウォッチングもおススメです。最近は新型のAB900型がほとんど走っておりますが快適な車両です。
また昨年、1編成なくなった際のラストランに乗車した従来型の8100型も乗って欲しい車両です。モーター車は懐かしい国鉄車両のモーター音が聴けます。ちなみに阿武隈急行はモーター車がなぜか東京向きでした。AB900型はJR車両と同じ向きです。マニアックなネタですが… 椅子も昔ながらのフカフカです。あと8100型は2編成残っていますので、なんとか残存していただき鉄道ファンのみならず観光客の呼べる車両として活用して欲しいです。車体の色は変えなくとも、昔ながらのボックスシートを活かした企画で残して欲しい車両です。特に先述した丸森~梁川間をゆっくり走る観光列車や4両で阿武隈急行線をひたすら夜中を走行する現代版夜行列車など、夜行列車が懐かしい世代や夜行列車を知らない世代のファンなどにいかがでしょうか? 個人的に期待してます。
最近は宮城県側での乗客が少なく存廃の議論になっておりますが、福島・宮城を鉄路がつながっている意味を理解して、なんとか鉄路を維持して欲しいです。1度線路を剥がすともう敷くことは難しいですから。 「乗って残そう〇〇線」になる前に・・・
2025.2.11
伊藤 謙信
伊藤謙信さんからの寄稿