『アドベンチャー路線 会津線』

今月の8月6日、当協会事務所に二人のお客様がお見えになりました。お一人は協会事務所のお隣さんの会社の代表者をされている大沼さん、そしてもう一人は大沼さんの友人の伊藤謙信さんです。伊藤さんはお仕事の傍ら色々な交通機関にご興味があり、取り分け鉄道に関心があるということで、大沼さんを通じ当協会の存在をお知りになり、訪問してくれました。

大沼さん、伊藤さんそして私(事務局長 髙橋)は、1時間ほど東北鉄道協会会員の鉄道会社に関わるお話などを談笑させていただきましたが、その中で、伊藤さんは当協会加盟鉄道会社の路線にほとんど乗車されており、その歴史なども良くご存じで、大変感心させられた次第です。

そこで、当協会の旅客鉄道の路線についてエッセーをこのホームページに寄稿いただけないか、髙橋からお願いいたしました。もちろんボランティアで。

この厚かましいお願いに対して、伊藤さんから快くOKを頂き、この度『アドベンチャー路線 会津線』と題して寄稿して頂きましたのでご紹介します。

                                                          (東北鉄道協会 事務局長 髙橋浩也)


アドベンチャー路線 会津線

 

 会津鉄道線は会津若松から会津高原尾瀬口まで結んでいるローカル線です。会津鉄道の終点である会津高原尾瀬口は、終点でありながらさらに鉄路が続いている始発駅でもあります。その先は野岩鉄道・東武鉄道が接続しており、意外かもしれませんが東京・浅草まで行くことができる路線です。

 

 会津鉄道は旧国鉄から引き継いだ第3セクター鉄道ですが、3ヶ月と少しだけJR東日本だった変わり種の第3セクター鉄道です。国鉄時代から「会津線」を名乗っていますが、昨年全線復活開通した「只見線」も昔は「会津線」でした。当時、会津若松駅では2つの「会津線」の行先表示があり、地元の方や鉄道好きな方でないと乗り違えることが多かったと思います。ホームの表示が「会津線」で、その先の西若松駅から2方向に分かれて走る路線なんて全国でも珍しい路線でした。

会津若松駅を発車した会津鉄道は、JR只見線を西若松までJR線上を走行します。四国の予土線の「土佐くろしお鉄道」のJRとの共有区間は第3セクター所有ですが、当時の第3セクター転換時の只見線の運転方式の関係で「会津鉄道」の所有にはならない路線で、これも興味深い経緯のある路線です。

 

 西若松駅からいよいよ真打の「会津線 会津鉄道」。古くて新しい設備などが混在している路線で、車窓を眺めながら旧国鉄探しをするのも楽しい路線です。線路の規格は幹線より味のあるローカル用の線路を使っています。枕木も現役で「木」を使っています。一部は北海道並みに枕木の幅も開いていて、先頭車で眺めているとなかなかスリル感があります。

カーブで桜が綺麗でネコ駅⾧で有名だった「芦ノ牧温泉駅」。その駅のはずれに古い国鉄からもらった気動車が再利用されて止まっています。これもなかなか渋い車両で、全国でもこの型の車両が現存しているのは珍しいので、ネコ駅⾧や桜に飽きたら、こちらの車両も見て欲しいですね。

 そこから新しいダムで近代高架線のような立派な線路からの眺めも「只見線」に負けず綺麗な路線。「只見線」との直通運転などが実現できたら楽しみな路線です。そこからも川を⾧い鉄橋でいくつも渡るのも、ジェットコースター気分になれます。新しい路線、古い線路、鉄橋など、なかなか見ごたえがある路線です。

 

 茅葺屋根で有名な「湯野上温泉駅」。江戸時代からあるような雰囲気ですが、会津鉄道が第3セクター開業時に移築新築した駅舎で、なつかしの「囲炉裏」があり、列車の待ち時間や近くの観光地「大内宿」への接続待ち時間に「おちゃっこ」で休める駅です。ここで途中下車もよいですね。

 

 その先、変わった名前の「塔のへつり駅」。徒歩で行ける景勝地「塔のへつり」の最寄り駅です。駅からチラッとでも見えたら、途中下車をしたくなりますよ。奇岩の中を歩ける、ちょっと?かなりスリリングな景勝地です。こちらもおススメな場所です。そこから田舎感のある駅名をつけた駅を通り、会津鉄道の拠点駅の「会津田島駅」に到着です。ここの駅

は会津鉄道の車庫があり、さまざまな車両が見ることができます。鉄道好きにはたまらないホームと車庫の距離感で浸れる駅です。

 

 さて、ここから会津鉄道が変身し電化路線になります。「電車」が走る線路になります。この線路と電気の架線のアンバランスがなんとも言えない感…。架線を支える柱もJRより細く、なんとも味のある柱です。一見して欲しいですね。

 ちなみに変電所の電気容量の関係?電気代の関係?で会津田島駅から会津高原尾瀬口駅の間には電車が1編成しか走ることができません…。ので、増発は出来ないかなと思います。電車は東武鉄道のリバティ特急型車両を使用して快適な移動が出来るようになります。椅子はリクライニング、テーブル付でちょっぴり乗り得列車です。

電車らしい速度で走ると、列車の走行音が変わる区間が何か所かあります。普通の「ガタンゴトンガタン」ではなく「ガタンガタンガタン」との走行音の区間があります。ちょっとロックンロール音のような走行音で少しノリノリな気分になり、飲んでいたお酒もノリノリになってしまう、ちょっと危険な区間です。

 

 そんな奥会津の車窓を眺めつつ「会津高原尾瀬口駅」に到着。駅名の通りに「尾瀬」の玄関口です。いまでは貴重な夜行列車の終点駅、1年に数回、東武鉄道夜行列車「尾瀬夜行」の終点です。ここから「野岩鉄道線」に接続して特急リバティで東京・浅草まで東武鉄道に乗り入れ直通しており、始発の会津若松からだんだんと線路、設備が近代的になりつつ、昔の線路が残り、川・谷などもう一つの「会津線 只見線」に負けないくらいの車窓路線「会津鉄道」。

春夏秋冬、どの季節も綺麗な車窓が楽しめる路線ですが、冬が個人的には熱燗とするめを切符と一緒に持参して、ゆっくり旅を楽しみながら、「奥会津」を感じてほしい路線です。

伊藤 謙信